施設別犯罪事情・防犯対策
事務所
事務所の犯罪事情
事務所の防犯を考える時に、良く言われるのが「現金や金目のモノは置いていない」ということです。
こう考えて対策を取られていない経営者の方に対し、まず認識を変えていただくことが必要となります。事務所への窃盗のことを「事務所荒らし」というように古くから侵入窃盗の対象となっています。
実際に侵入窃盗の11.1%(前年7.9%)が事務所が対象となっているのです。
なぜ事務所が狙われるのか?
なぜ大金や貴金属など金目のモノがないのに事務所が泥棒から狙われるのでしょうか?
- テナントビルなどの場合、人の出入りが比較的に自由なため、正面から堂々と入ることができる。
- 一度テナントビルの中に入ると、複数の事務所を一度に狙うことができる。
- ビジネス街などは夜間無人となるため、大型の破壊機器を使用して少々音がしても誰も不審に思わない。
- 日曜、祝日にはビジネス街は人通りが少ないので発見されにくい。
- 事務所の業務が終了した後の夜間は無人のため発見されにくい。
- 大金はなくとも、パソコン・ノートパソコンがあり、中古市場やネットオークションで換金できる。
- パソコン内の個人情報などデータを販売することもできる。
- 大型金庫の中に、預金通帳やカード、手形、小切手、株券・高速券・商品券など有価証券などがある。
複数の窃盗団により数十キロの金庫ごと盗まれる場合も多い。 - 新商品情報など機密情報を狙っての犯罪もある。
- 従業員が退職しても鍵を交換していなかったり、保管場所が同じ、暗証番号が同じなどで退職した社員に侵入される。
といったことが上げられます。
盗まれるモノ
金、金庫、O現A機器が上位3位を占めます。
金庫を狙う場合は複数犯が多く、台車などを持ち込み金庫ごと数分で盗んでいます。ここ数年、重さ100キロ以上もある金庫をそのまま屋外に持ち去る「金庫盗難」の被害も多くなっています。
被害額が数千万円を超える場合もあります。金庫内に保管していた手形、株券、商品券など有価証券や、契約書、権利書、機密書類なども同時に盗まれています。
又、パソコン・ノートパソコンの盗難は、単にモノが盗まれた被害だけに留まらず、「個人情報漏洩」として大々的に新聞に取り上げられ、お詫びはもとより賠償問題に発展したケースもあり注意が必要です。
又、パソコンを盗まれたり破壊されたりすると、その中にあった経理・売上データや見積書、提案書など実際の営業活動に必要なデータが紛失といったことになり、被害は金額にき換えられないほど大きなものになってしまいます。最近では内部の顧客データを取り出し市場に流したり、盗難元企業を恐喝する被害なども発生しています。
内部犯行で従業員や元従業員が休日に事務所に侵入しデータを持ち出すといった犯罪もあります。
侵入と手口
事務所への侵入窃盗は令和元年で7,601件発生しており、平成27年のデータによると、手口別には、ガラス破り(39.5%)、無施錠(24.8%)、その他の破壊(3.4%)、施錠開け(0.4%)、錠破り(9.5%)となっています。
侵入口では表出入口(42.5%)、窓(31.5%)、その他の出入口(17.6%)となっています。
実際にこんな被害も発生しています。
- 事務所荒らしなどでは、特殊な器具を使う「ピッキング」やバールを使って侵入。金庫を持ち去るか、バールでこじ開け金品を奪う。「ピッキング」は、発見を遅らせるため、目立つドアだけに使う場合が多い。
- 午前零時以降の未明の犯行が多く、数分で犯行終了。部屋の間取りや明かりのスイッチの位置など、入念に下見していた可能性もある。
- 合鍵かピッキングの手口を使って忍び込み、備え付け金庫をバールのようなものでこじ開け、会社の運転資金を盗難。引き出しなどから現金数万円が盗まれた。
- 事務所に忍び込み、海外に深夜から朝まで電話やインターネットを利用。後日電話の請求書が来て初めて被害を知ったケースもある。
- 証券会社から顧客リストが流出、これを入手して同社から現金をゆすり取ろうとした男3人が恐喝未遂容疑で逮捕された。株主総会を翌月に控えた時期に訪問し、『世間にしれれば困るだろう。返したいが金額はそちらが決めてくれ。』と買い取りを求めたり、利益供与を持ちかけたりした。
- 勤務先のパソコンから顧客データを盗み、医療機器輸入販売会社を恐喝した。
- リストラされた腹いせに、元社員が事務所に侵入し、データ消去、備品破損させたり、放火する。
- 侵入した結果盗るものが無かった腹いせに放火をしたり、事務所内を荒らす。
事務所の防犯対策を考える上で、自社ビル、雑居のテナントビルの一室、マンションの一室、自宅兼用、病院や学校の一部など、形態の特性を考慮することが必要です。
自社ビルの対策方法
- 夜間・休日の敷地内への侵入を検知するよう、建物外周警戒システムを導入する。
- 従業員出入り口や重要な部屋への扉にて建物・部屋への入退出管理を行い、自由に出入りできる人間を制限するとともに、誰がいつ入退したかの記録を残す。
- 来客用の出入口では業務時間中は受付などが入退出を管理、夜間は出入できなくする。こじ開けなどの不法侵入時には音と光で威嚇するとともに管理者に自動通報するシステムを導入する。
- 監視カメラを入退出管理や侵入警戒システムと連動させ、入退出の状況を自動録画する。
- 退出者の入退出カードのデータ消去を速やかに行う。
雑居のテナントビルの対策方法
- 自由にビル内のエントランスなど共有部に出入りできる環境のため、1Fエントランスに入退出管理用のカードリーダーや鍵管理システムなどを設置し、専有部には休日・夜間などの時間には部外者の立ち入りができないようにする。
- エレベータとも連動させ、無人の階には止まらないようにする。
- ビルに侵入してしまえば、事務所へ侵入する際は一般家庭と同じように出入口や窓から、ガラス破りや錠破りによる手口で侵入されるケースが多くなるため、各テナントには別途侵入検知センサーを設置し、入退出管理システムと連動させ自動的にON/OFFを行う。不審者が侵入した場合には音と光で威嚇するとともに管理者へ通報する。警備員が入る場合には警備室でどのテナントで異常が発生したかが把握できるようにする。
- テナントが替わるごとに錠前の変更、入退出用のカードデータの消去などを実施する。
共通の対策
- ビルの出入り口を電気錠・オートロック・入退出管理システムなどを設置し、出入りを制限・管理する。
- 営業時間にはビルの入り口には受付を設置し、人の出入りを管理する。
- ビルの出入り口、非常階段、エレベータホールなどに監視カメラを設置する。
- エレベータ内に監視カメラ、非常用押しボタンなどを設置する。
- 非常階段、非常口の電気錠は通常は施錠にしておく。
- 各部屋への扉に関しても施錠の徹底を行う。重要な部屋等にはカードや指紋などの入退出管理システムを設置する。
- 扉、窓には侵入検知センサーを設置し、就業時間外や休日への侵入を検知し管理人などに自動通報する。
- 金庫は「耐火金庫」ではなく「防盗金庫」にし壊れにくいシリンダー、ダイヤル錠など複数、丁番も大きく丈夫など破壊行為に強いタイプのものとする。
- 金庫内に金庫センサーなど傾きや振動に反応する警報装置を設置し、異常発生時には音と光で威嚇するとともに管理者へ自動通報する。
- 金庫を床にボルトで固定し、金庫の持ち出しやこじ開けをしにくくする。
- 合い鍵やテンキー、ダイヤルの開錠番号などを見つけやすい場所に保管しない。
- 金庫のある部屋に侵入検知センサー、監視カメラを設置する。部屋へは入退出管理を行う。
- 防犯担当者を選定し、セキュリティ対策に関して社内検討・通達・実施の徹底・教育を行う。
- 個人情報保護法対策としてプライバシーポリシーを策定・公表するとともに、個人情報記載書類・データをピックアップし機密書類として保管を徹底する。
- キャビネット、机の施錠の徹底と鍵保管の厳密化を行う。
- パソコンはID・パスワードを設定しアクセス権限の設定を行う。異動や退職時、その他定期的に変更・アクセス権限の削除などを行う。