施設別犯罪事情・防犯対策
寺・神社
仏像盗難
ここ数年仏像や神像が盗まれる被害が急増しています。
●令和4年5月京都市上京区の日蓮宗本山・立本寺(りゅうほんじ)から仏像「月天子(がってんじ)」が盗まれ、インターネットオークションサイト「ヤフオク!」に出品された事件で、出品した大分県の古物商会社を通じて同寺に返還された。文化財の指定は受けていない。
●平成31年には、2月に田辺市本宮町の華蔵寺、白浜町の梵音寺でそれぞれ本尊像が盗まれた。犯人2人は8月に逮捕されたが、一人は新宮市内の古美術商であった。専門知識を持つ業者が手引きしていたわけであり極めて悪質といえる。こうした古物商・古美術商が関わる文化財窃盗はかなり多いとみられる。直接販売のルートを持つが故のことであろう。幸いどちらも取り戻すことができたが、華蔵寺の場合は台座の底部に記されていた多数の墨書が削り取られていた。梵恩寺の場合は犯人が盗み取ったものの売り捌くことができず(被害直後の地元新聞社の報道が功を奏したとみられる)、由良町内の廃業したレストランの駐車場に放棄され、指紋消しの意図で仏像本体や光背・台座に食器用洗剤が大量にかけられ汚損されてしまっていた。
●対馬仏像盗難事件。平成24年に、日本の長崎県対馬市の三つの神社・寺院から、韓国人窃盗団によって重要文化財の仏像2体などが連続盗難された事件。韓国の裁判所が盗難仏像の日本への返還を事実上拒否する決定を下し、1体は返還されたが未だに1体が未返還なため、日韓間で外交問題となっている。平成26年11月、令和元年10月にも、別の仏像盗難事件が起こっている。
●平成18年2月には、一人で東京・奈良・広島などで約60件の仏像窃盗をした男性が逮捕された。 自宅には18体の盗んだ仏像が発見されていル。 奈良の法隆寺では盗み出す際に、国宝の木製格子6本をのこぎりで切断される他、盗まれた仏像は指や腕が折れるなど一部が破損する被害を受けている。 この犯人は個人の収集のための窃盗を繰り返していたが、日中の拝観者を装いのこぎりで格子を切断するなどの手口は巧妙で、見つけられなかった。
●滋賀県では平成15年以降仏像・ご神体の窃盗被害が18件74体発生。狛犬、掛け軸、仏具を入れると100点以上。大半が無住寺社で文化財指定は1件のみ。
- 裏の勝手口アルミサッシのドアをバールのようなものでこじ開けられ滋賀県の寺にて仏像2体、狛犬1体、掛け軸計8点が盗まれる。
- 滋賀県で文化財指定なしの室町~江戸時代作と推定される大日如来像など44体盗まれる。
- 本堂入口の南京錠が金具ごと外され扉上部の電線が切断される。
盗まれるのは重要文化財だけと思われるかもしれませんが、被害の大半は文化財の指定を受けていないものが多いのです。盗みやすく、売りさばきやすいことが原因と思われます。
無住寺が多く、ほぼ半数が盗難被害に気づくまでに3日以上、最長は約2ヶ月も経過していたこともあります。
盗品の情報は、通常警察から古美術業界に通知されます。寺社管理者がすぐに犯行に気づき、警察に仏像等の写真や寸法等詳細内容を届け出れば見つかる可能性も高くなるのに」とある古美術商は指摘しています。実際に事件の報道で盗まれた重要文化財の写真が新聞掲載されたため売りさばくのをあきらめて離れた場所に放置されていたケースもありました。
「盗品だと判らずに購入する例はあり、古くて状態が良ければ1体5万~10万円程度で買い取ることが多い」とのこと。
海外で価値が出る物も多く、古美術として海外に販売されることも多いのです。約9割が海外とも言われています。
なぜ仏像が狙われるのか?
仏像が盗まれると
●心の拠り所が盗まれたことになり、住職、檀家共に精神的なダメージが大きい。
●万が一見つかったとしても、修復に高額なコストがかかったりしている。
●仲介者にお金を払って買い戻した事例もあるようである。
放火や火災被害も急増。
●フランス ノートルダム大聖堂の火災は、令和元年4月。煙草の不始末か電気系統の故障が原因であった可能性が高い。
●沖縄首里城令和元年10月の首里城(那覇市)の火災。「火災原因は不明」。正殿など全焼6棟に加え、調査中だった奉神門と女官居室の2棟を部分焼と断定。建物と収容物を合わせた損害額は約53億円と算定した。
●平成12年、京都大原の寂光院は放火にて本堂が全焼。堂内の重要文化財「木造地蔵菩薩立像」(鎌倉時代)も焼損。本堂には人は住んでおらず、西側の縁付近からプラスチック製容器の燃えかすと、灯油が検出され放火と断定された。
平成19年5月に、犯人を絞りきれず時効となった。
平成16年度の神社・寺院の火災発生件数144件のうち、71件が放火・放火の疑いのある火災でした。
放火は、「むしゃくしゃした腹いせに」といった犯行が非常に多いのです。神社仏閣の場合木造建築のため、気づいたときには火が広がっていて、大切な建物な仏像や宝物などに被害が発生していることが多い。
寺社連続油被害事件
平成27年春から平成29年にかけて近畿地方を中心とした全国地域で、相次いで寺社の国宝や重要文化財などに油などの液体が撒かれ汚損された。
各地の警察は文化財保護法違反、器物損壊、建造物損壊 などの疑いで捜査を行っており、米国在住の韓国のキリスト教系宗教団体の韓国系日本人教祖の容疑者に対し逮捕状が発付された。
平成27年にも奈良の三ヶ所の寺社で同様の事件が発生。
平成29年には京都・奈良・沖縄・大阪・東京で発生。東京・明治神宮の事件では油のような液体を散布した容疑で既に日本から出国していた朝鮮族の中国籍の女2人に逮捕状が発布された。
賽銭泥棒
賽銭箱は現金が中にはいったままという泥棒にとっては貯金箱のようなもの。
こじ開けられると、中の賽銭以外に修繕したり新しく買い替える費用が非常に高くつきます。
犯人にとっては「寺や神社は犯行しやすい環境」
泥棒や放火犯にとって、最も重要なことは「人目に付かず確実に逃げられること」。
神社仏閣は下記の通り、犯人にとって「犯行しやすい環境」ベストコンディションであるということをぜひ認識し、少しでも対策することが重要です。
- 「観光客、参拝者を装って下見」が可能。誰にでも開放されている場合が多いため、いつでも下見や犯行を行うことができる。
- 樹木に囲まれており、道路など外部からの見通しが悪い。
- 夜間暗がりがあり、隠れたり犯行を行うのに適している。
- 誰にでも開放されているため、たまたま誰かに出くわしても参拝者を装い逃げることが可能。
- 大切な仏像や宝物、賽銭などが手に届くところに置いてあり、周囲に人目がない時間帯が多い。
- 無住の寺社も多く、異常が発見されにくい。
寺・神社の防犯対策
- 無施錠のところからの侵入による被害が多いため、必ず破壊工作に強い錠前を付け、施錠することを習慣にしましょう。
- 無住の寺社の被害が多く、発見が遅れると、被害が拡大するため、特に注意しましょう。
- 地域での防犯パトロールを実施し、「防犯意識が高い」ことをPRしましょう。地域住民や門徒、氏子などとの連携をすることが大切です。
- 常日頃より何か異常が発生した時の連絡網をきちんとつくっておきましょう。
- 仏像、ご神体、狛犬、掛け軸などは写真を撮り、特徴などを記録させておくこと。万が一盗難されても手配ができるようにしておくことが大切です。
- 夜間などの敷地内への侵入を検知する「赤外線センサー」や人が入った時に自動的にライトを付ける「人感ライト」、監視性を高める監視カメラ、放火時の炎を検知する「炎センサー」など防犯システムを設置すると効果があります。
- 放火対策としては、燃えやすいものを建物周辺に放置しないことが大切です。
- 壁などへのいたずら書きや窓ガラスの割れたのを放置しないこと。防犯意識が低いと思われ、次の犯罪を誘致することとなります。