対象別犯罪事情・防犯対策
海外旅行の防犯対策
日本国内でも凶悪犯罪が多発していますが、外国での日本人は犯罪ターゲットとなりやすいのです。
外務省『海外邦人援護統計 2020年(令和2年)版』によると、2020年の邦人の援護件数は2万1,762件で前年比7.23%増。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより邦人援護件数は増えましたが、往来が減ったことで、「強盗・窃盗・詐欺」(前年比74%減)、「遺失・捨得物」(前年比74%減)、「所在調査」(前年比96%減)と、従来のものは大きく減っています。 コロナ禍で自粛されていた海外渡航が再開され、海外への渡航者数は又どんどん増えることが予想されています。
それに伴い、トラブルや被害の数も増えています。日本大使館、総領事館が扱う日本人のトラブル事案は年間1万7,000件に上ります。6人に1人が海外トラブル経験者なのです。
実際には団体旅行客からバックパッキンでの貧乏放浪まで日本人の旅行者といっても旅のスタイルもまちまちですが、現地でトラブルに巻き込まれないための方法に関してご紹介します。
なぜ日本人が狙われるか?
●日本人は大金を持っている(と思われている)
特にトラベラーズチェックではなく、現金を持ち歩いている。アジアや南米などの平均所得から考えると全て「大金」である。
●日本人は「安全」に関しての意識が低い。
●日本人は団体で行動していることが多く、団体だと防犯意識が低くなる傾向にある。
●日本人はデジタルカメラやスマートフォン、ノートパソコンなど高額商品を持っている。外国では高値で換金可能。
●日本人は人前で不要にお金を見せる。人前で財布を開けてお札がどれくらい入っているかを感じさせるは世界では非常識。
●日本人のパスポートや航空券が闇市場で高値で販売することができ、金になる。
●日本人はブランド物を持ち歩いており、手荷物にはブランド土産商品も多い。
●日本人は手荷物が多いので隙ができやすい。
●日本人は現地の人とコミュニケーションを取りたいと願っており、そこに犯罪者がつけいる。
どんな被害が多いか?
『スリ』
スリも、数名でチームを組み、一人がお金や荷物を落としたり転けたりしていている隙に被害に遭うといった複雑な手口で被害に遭ったり、「タバコの火を貸して」「服が汚れている」等話しかけられている隙にすられる。「話しかけすり」「ケチャップかけ」「コイン落とし」など。
『置き引き』(財布・手荷物、トランク)
この被害が一番多い。ほんの一瞬目を離した隙になくなる。04年年間2300件前後発生している。レストラン、空港、ホテル(チェックイン時)の犯行が多い。
『ひったくり』(財布・手荷物、時計、指輪など)
年間400件強。バイクなどに乗って後ろからバックをかっぱらうという手口だけでなく、南米など治安の悪い所では荷物と一緒に手首から切り取られたなどという恐ろしい話もある。又、強引に肩紐を引っ張られて転倒し、歩道の縁石で頭部を強打し重傷を負ったり、死亡したなどの被害もある。
『集団スリ』
ジプシーの子供に囲まれた瞬間に新聞などで手元が見えないようにされたり身動きできないようにされている間に手荷物・腕時計など全てなくなっていたなどという被害例も多く注意。
『盗難』
ホテルの部屋や夜行列車の個室で盗難に遭ったという被害が多い。窓の鍵をこじ開けられたり、合鍵を使われたと推測されるケースもある。セーフティボックスに預けた貴重品の中から紙幣を数枚抜かれる等被害もある。又、部屋に人を入れた結果財布を盗まれたなどの被害も。
『詐欺』
04年は455件。急増している。特に、「いかさま賭博」「賭博詐欺」は02年の1.5倍。アジアでの犯行が多い。娘が近く日本に留学するので話が聞きたいなどといって近づき家に呼ばれ、いつの間にか賭博をするはめに。最初は勝っていたが賭け金が大きくなるに従い負けが込んできて、最後には全額負けてしまう。本人以外は全員仲間。その他「安い土産店を教えてあげる」「日本語を勉強している」「案内してあげる」など色々口実をつけ知り合い、高額商品を売りつけたり、高い店に連れて行く。数日かけて数名で犯行といった手口もある。
『偽警官詐欺』
警察官を名乗る男に所持品検査をされ、財布やパスポートを提示。すぐに検査は終わったが、後で確認すると財布から紙幣が数枚抜かれていた被害も多発。
『睡眠薬強盗』
睡眠薬入りの飲食物(コーラ・ビール、紅茶、サンドイッチ、クッキー、ケーキなど)を勧められ、食べた数分後には昏睡状態に。その間に貴重品を盗まれる、山の中に捨てられるといった被害が多発。病院での胃洗浄など快復するのに2~3日は必要。死亡した場合もある。
『強盗』
ホテルの部屋をノックされ開けたら強盗。閉めようとして射殺された例もある。
『その他』
・麻薬を当然のこととする雰囲気や、友人の誘いで、「いつでも止められる」と思いつつ、はまってしまう人も多い。
・ほんの軽い気持ちで知人からの依頼を引き受けたために、「麻薬の運び屋」として逮捕され、重い刑罰を受ける場合も少なくない。知らずに持っていた荷物に入っていた場合もある。国外退去、終身刑、死刑など非常に重い罪の国もある。
・警察にパスポートを見せろと言われて、賄賂を要求されるなどといった被害も後進国では多い。
・タクシーでのぼったくりなど被害も多い。強盗などもあるので一人で乗車する時は注意。
・異性問題トラブル。
・スキミングによるクレジットカードの偽造。
・クレジットカード決済の金額偽造。(桁を追加したり数字を変える)
・車上荒らし(541件)
・空き巣(231件)
各国の犯罪事情
外務省 海外安全ホームページより、日本人の巻き込まれた犯罪データをご紹介します。
犯罪被害の割合は、アジア27%、北米11%、欧州44%、大洋州8%、中近東1%、アフリカ2%と概ね渡航者数に比例します。アジア、欧州が全体の74%と同じく渡航者の多い北米やオセアニアと比べても、アジア、欧州の比率は高いといえます。
アジア~詐欺被害には要注意
アジア地域では、窃盗、強盗、詐欺の全てに注意が必要ですが、特に多発しているのが詐欺被害です。世界全体の日本人詐欺被害の77%がアジア地域で発生しています。特に複数犯による「いかさま賭博詐欺」や「宝石のキャッチセールス」はアジア地域特有の犯罪と言えます。「睡眠薬強盗」も71%がアジアで発生しています。「複数の人間がゆっくりと時間をかけて、観光客を罠にはめる」というのがアジア的犯罪の特徴です。
ヨーロッパ~電撃型犯罪が多発
欧州では、どちらかというとスリ、置き引き、ひったくりなどの瞬時に犯行を完結する手口が多く見られます。置き引きは世界全体の52%、スリに限っては62%、アジアの2倍強という数に上っています。ひったくりも48%を占めています。特に、「話しかけスリ」「ケチャップスリ」(路上でいきなり話しかけたり、ケチャップ類を引っかけ、相手の隙をみてスリを実行)、「集団スリ」(外国人観光客を集団で取り囲み、身動きできないようにしてスリを実行)などが、欧州で特に多く見られるスリの手口です。また、路上でいきなり背後から襲って、強引に金品を奪取する「首締め強盗」「羽交い締め強盗」の類や「偽警官詐欺」(持ち物チェックをするふりをして財布からお金を抜き取る)も依然として発生しています。
北米~車上狙いが多発
北米の各都市では、長期滞在者はもちろん、一般の観光客もレンタカーを使用する機会が多く、そのため「車上狙い」が非常に多いのが特徴です。世界の約40%の被害が北米地域に集中しています。その他置き引きの被害にも注意が必要です。
オセアニア~宿泊先での窃盗、強盗
オセアニア地域は、留学やワーキングホリデーでの長期滞在者が多いこともあってか、宿泊先での空き巣や侵入強盗が多く見られます。特に若者の旅行者の場合、ユースホステルやバックパッカーズ宿などの比較的安価な宿泊施設を利用していることが多いのも原因の一つと考えられます。
性別による犯罪被害特徴
被害になる確率は男性上位
2002年の日本人渡航者全体の割合を見ると、男性55%、女性45%ですが、財産被害に遭われた割合は、男性59%、女性41%となっていますので、若干ですが、男性の方が高い確率で被害に遭っているといえます。
女性の個人旅行者も増えていますが、一般的に、男性は自由な個人旅行を行うケースが多く、その分犯罪の危険に遭遇しやすいのかも知れません。
「列車や長距離バス内でのスリ」、「車上狙い」といった被害に遭う確率は、男性の方が圧倒的に高いことからも、一人旅には危険が伴いがちということが裏付けられます。
男性をターゲットとする犯罪
女性に比べ、男性が被害となる確率が圧倒的に高いものには、上記の他、「話しかけスリ」、「道案内スリ」、「睡眠薬強盗」、「いかさま賭博詐欺」などが挙げられます。これらの犯罪被害には共通して「見知らぬ人からの誘いに応じてしまう」ことに原因があります。
女性をターゲットとする犯罪
反対に女性の被害件数が多いものには、「引ったくり」、「バイクによる強奪」、「ケチャップスリ」などが挙げられます。
女性はカバンや買い物袋などの荷物を持ち歩く場合が多く、抵抗する腕力も男性と比べて弱いことから、「ひったくり」や「強奪」などの強引な手口による窃盗には、常に用心しておくことが大切です。
また、ケチャップ類を衣服につけられ、それに気をとられている間に身の回り品を盗まれる「ケチャップスリ」は、女性心理を巧みについた犯罪と言えるでしょう。