こんなおかしな泥棒がいる
vol.13 『ルパン参上』
窃盗前科8犯。人生の大半を刑務所で過ごす。およそ改心という言葉を知らぬ根っからの泥棒で"昭和の怪盗""日本のルパン"の異名をとる。
彼には独自の流儀があり、まず敷地300坪以下の家は絶対に狙わない。取り調べの捜査員にも「貧乏人から盗むと、どうも後味が悪くていけねぇ」ともらしている。このあたりが"ルパン"というわけだ。
カツラやベレー帽で変装して夕暮れとともに出勤。勤め帰りの住人を装って正門から邸内に入り、庭木に登って弁当を食べながら家人の寝静まるのを待つ。
邸内のあかりが消える。出動開始。ガスライターにボンベを接続した"小型火炎放射器"でガラス戸を焼き切って屋内に侵入。家人が戻ってこないとみると、仕事を終えたあとで冷蔵庫をあけてスキヤキなど作り、ビールを飲みながらゆっくり食事をした上に、フロを沸かして一汗流すというずうずうしさ。
昭和56年1月、指名手配されたあとも次々と犯行を重ねたが、翌年の夏頃からプッツリと消息を絶った。さすがの怪盗も寄る年波には勝てなかったとみえる。