対象別犯罪事情・防犯対策
自動車の盗難
自動車の盗難
平成8年 33,722件の自動車盗難認知件数であった自動車盗難は、毎年急増し、平成14年若干減少、平成15年再び増加し、64,223件となりました。平成16年からは毎年減少し、平成30年には8,628件となっています。認知件数は減少傾向にあり、令和3年には5,182件となりました。しかし、まだ高い水準で盗難被害に遭っているといえます。
平成4年6月には東海地区で自動車盗を繰り返していた窃盗グループが愛知、千葉両警察に摘発されました。
- 自動車窃盗グループによる乗用車盗難。少なくとも48件。
愛知県日進市で住宅の駐車場から乗用車を盗んだなどとして自動車窃盗グループの男10人が逮捕され逮捕されたのは豊田市の職業不詳(50)やバングラデシュ人の男らあわせて10人でバングラデシュやイラン国籍の男ら6人は、盗まれたものと知りながら乗用車など3台を千葉県内のヤードに保管した盗品等保管の疑いが持たれています。 - 同グループは半日足らずで約300K離れたヤードへの運搬や車体番号の買い残まで完了させていた。車の制御システムに直接侵入する「CANインベーター」の手口で、スマートキーなしで車体を傷つけずに盗んでいた。
- トヨタ車を何台も盗んだ後千葉県八街市のヤードに運搬し、車体番号が刻印された金属板を付け替えた上で海外へ輸出していた。
自動車盗 認知・検挙状況
平成8年 33,722件の自動車盗難認知件数であった自動車盗難は、毎年急増し、平成14年若干減少、平成15年再び増加し、64,223件となりました。平成16年からは毎年減少し、平成30年には8,628件、令和4年には5,734件となっています。
認知件数は減少傾向にありますが、しかし、まだ高い水準で盗難被害に遭っているといえます。
油断は禁物。鍵をかけていても盗まれるケースも
・コンテナ詰め等に使用していると認められるヤードという施設が多くある地域での被害が多い
・海外で人気が高い機種に被害が集中している
上記により、盗難自動車を解体し、海外へ不正輸出を行っている組織的窃盗団による犯行と思われます。
損害保険会社の団体である日本損害保険協会が中心となる「自動車盗難防止に関する官民合同プロジェクトチーム」が2019年の自動車盗難の状況を公表した数字によれば、2019年都道府県別のワースト順は茨城県の1482件、大阪の952件、千葉の738件、愛知の681件、埼玉の630件でしたので、上位5件はほぼ同じです。
新たな手口続々。こんな手口による被害が発生・・・
自動車盗難の手口も、窓を割ってといった原始的方法からピッキング、不正合い鍵作成、赤外線や電波を使用したワイヤレスキーの不正解錠など、どんどん巧妙化しています。
いまだ組織犯罪としてのクルマ盗難は少なくなく、リレーアタック、コードグラバー、CANインベータのようなハイテク犯罪も登場しています。特に狙われやすい車は複合的な対策を行うとともに、駐車時は細心の注意を払うことを忘れないようにしましょう。
リレーアタック
リレーアタックとは、スマートキーが発している電波を中継し、遠く離れた車両を開錠、エンジンを始動させてしまう盗難手口です。この手法を用いることで、鍵が離れた場所にあっても車両を盗むことができてしまいます。自宅に駐車していても、玄関先などにスマートキーを置いていると、その電波を傍受されて盗まれてしまったという事例もあります
●対策
・ブリキやスチール製の金属缶にスマートキーを入れ、ふたをしっかり閉めることで物理的に電波を遮断でき、外部からの傍受が困難になります。
・電波を遮断するスマートキーケースを使用する。
・スマートキーの設定を微弱電波を出さないようにするモード(省電力モード、節電モードなど)に切り替える。
参考:MOBY(モビー)
コードグラバー
コードグラバーとは、「車から発せられている電波(信号)を掴んで、鍵を開錠しエンジンを掛ける」技術で、この技術を使って車から発せられる電波(信号)を受信し、信号に含まれるイモビライザーのIDを複製してスマートキーを作りその複製スマートキーを使って自動車を盗む手口です。
車の所有者が持つスマートキーの電波をキャッチして車両を解錠するリレーアタックと違い、コードグラバーは鍵そのものを複製してしまうため、より悪質です。犯人はターゲットから100m、場合によっては500m離れていてもスマートキーの情報をコピーできてしまいます。
・車の持ち主が近くにいなくても、車を盗み出すことができてしまう。
・リモコン操作による開錠ではないため、車を開けた時にアラーム音はならず、ハザードランプもつきません。スマートキーとIDコードが一致しているので、イモビライザーなどの車内外の盗難防止装置も作動しません。
・信号をリレーする必要がないため、窃盗犯も1人で十分。少人数で、目立たず車を盗み出すことができてしまう。
●対策
・リレーアタックの対策。
・タイヤロック、ハンドルロックを使用して簡単に車に乗れないようにする。物理的に盗難を防止することができるほか、抑止効果がある。(物理的防御)
・防犯カメラ、外周警備など防犯対策の整っている駐車場を利用する。
参考:MOBY(モビー)
CANインベーダー
CANインベーダーは、自動車の様々な情報が集約されるOBDⅡへと不正にアクセスし、盗難する車両を解錠、運転できる状態にします。
具体的には、OBDⅡに繋がる「CAN信号」という配線にアタックすることでシステムへと介入しています。
CAN信号は専用の機器さえあれば車外からもアクセス可能で、スマートキーは必要ないというのがCANインベーダーの手法となります。CANインベーダーが成功してしまうと、ドアロックの解錠はもちろん、純正カーアラームの解除や合鍵の作成まで可能。
セキュリティ解除とエンジン始動の機能が統合された新型CANインベーダーが数十万円程度の価格で出回っており、配線に割り込ませればセキュリティ解除とエンジン始動の両方ができるようになったため、さらに短時間での犯行が可能になっています。
参考:MOBY(モビー)
その他自動車盗難の手口
- 交差点で追突事故を起こし、持ち主が車を降りて話し合いをするために車から離れた隙に別の人間が乗り込み逃走。
- ドアの鍵穴を壊し、車内のコードを直結してエンジンをかけ盗み出す。
- 盗んだ車は人目に付かない山中で部品に分解し輸出。
- 中古車オークション会場で客を装いスペアキーを盗むとともに、ボンネットを開けてエンジン付近などに書かれている車台番号を控え、登録事項照明書を取得。証明書から所有者を追跡して夜中に駐車中の車を盗む。
- 車からナンバープレートと車検証を盗み、盗難車の売買に悪用。
- 駐車場にレッカー車、クレーン車で乗り付け、ターゲットの車を持ち去る。
- 家に侵入し、車のキー・スペアキーを入手する。
- 窓の隙間から針金で解錠する。
- シリンダーから合い鍵を複製する。
- ドアシリンダー・ドアハンドルを工具でこじり、解錠する。
- 本人になりすましてキーを受け取る。
- 被害車両全体の25.5%がロックされた状態で盗難されている。つまり盗難された車の4台に1台は、ロックを突破されて盗まれている。
自動車盗難の多い車種
令和3年に最も盗難にあったが、ランドクルーザー(13.6%)
盗まれやすい車の傾向としては以下のような車両が挙げられます。
- 人気SUV
- 高級ミニバン
- JDM(ジャパンドメスティックマーケット)
- 中古車価格が高騰している
平成16年
- ランドクルーザー
- ハリアー
- RAV4
- セルシオ
- グロリア
平成23年
- ハイエース(17.1%)
- セルシオ(10.1%)
- ランドクルーザー(9.2%)
- クラウン(7.0%)
- プリウス(4.7%)
被害に遭った場所(令和4年)
駐車場の中では、夜間照明がない・少ない駐車場での被害が多い。契約駐車場の場合には、駐車場所の選定も慎重に行う必要がある。照明が行き届いており、外部から見通しの良い場所が狙われにくい。
カギだけ気をつける時代は終わった
自動車のセキュリティは、鍵さえ気をつければ良しの時代から大きく変わってきています。色々な手口に対応するためにも複合的な防犯対策が必要です。
外部からネットワーク接続が可能なコネクテッドカー(CASE)が普及している現在、サイバー攻撃に対しても策を講じる必要が出てきています。「IoT(Internet of Things=モノのインターネット)」によりPCやスマートフォンなどと同様のセキュリティ意識が必要になってきています。
車上ねらい
車上狙いでは、「カーナビ」の被害が最も多く、全体の33.2%。
20万円以上の高級カーナビが狙われる傾向にあり、20万円以上の被害が7割、10万円以上の被害が9割となっている。
車の中に置かれたノートパソコンが盗まれ中の個人情報が一緒に盗まれることが大きな問題になっています。
車上狙いが多いのは
1位 大阪府2位 愛知県
3位 千葉県
4位 神奈川県
5位 兵庫県
- 子供を保育園に送迎する親が車から離れた隙に車上荒し。子供に気をとられて車に施錠しない親が多い。
- 店内から死角になりやすく、入店後しばらく持ち主が車に戻らないファミリーレストランの駐車場からドライバー1本で鍵開け(約2秒)し、車上荒し。
車上荒らし対策
- わずかな時間でも車を離れる時は必ずエンジンキーを抜き、ステアリングロックも確実にきかせておく。ドアをロックし、窓も完全に閉めていることを確認してから離れる。
特に追突事故や子供の送迎などちょっとした時間を狙っての犯行に注意。 - 貴重品は車の中に置かない。バックや背広、小銭でも見えていると車上荒しに遭う確率が高くなる。
- ノートパソコン・重要書類などを車内に置かない。個人情報保護法でもっと大きな問題になることもある。
- 路上駐車はせず、監視の行き届いた駐車場、夜間照明・監視カメラのある駐車場を選び、照明の良く当たる周囲から見通しの良い場所を選択して駐車する。
「駐車場内 2ルクス。車路10ルクスが警察庁「安全・安心まちづくり推奨要項」における防犯照明の推奨照度」 - 一定時間以上車から離れる時には、常に車を確認する。
- 容易にキーを人に預けない。預ける時は預り証を受け取る。
- 車内にスペアキーを保管しない。
- 家の玄関など目立つところにキー・スペアキーを置かない。保管は厳重に。
- 人前でキーをわずかな時間でも放置しない。居酒屋・サウナ・スポーツジムなど背広のポケットや入れっぱなしにしたり、テーブルの上に置いたまま離籍しない。
- ボディカバーをつけ、車種を特定されないようにする。
- 自宅の車庫はできる限りシャッター付きの車庫の方が安心。人感ライトを設置し、人が来ると自動的に照明が点灯するようにする。
- 車外からカーナビが見えないようにカバーをかける。
- 持ち運びが出来るタイプのカーナビは駐車時は自宅に持ち帰る。
- カーナビを取り付ける際には盗難防止対策を施した特殊なネジを使用して、取り去りを困難にする。
- 自動車盗難防止装置を設置する。
ハンドル固定ロック式防犯装置やイモビライザー、振動センサー・空気圧センサー、電圧変化センサー、キー穴異常センサーなど。 - 車の位置確認サービスと契約する。