施設別犯罪事情・防犯対策
店舗
店舗の犯罪事情
侵入窃盗の6.5%(前年6.5%)が「商店」への侵入です。数字的には一般家庭の33.0%(前年36.4%)に比べると少ないように感じられるかもしれませんが、店舗には現金や商品などがあり、被害金額は高額になります。
侵入窃盗発生場所別認知件数
店舗の場合には、犯罪者に狙われやすい理由があります。
・夜間や定休日などは無人となる。
・無人であることが外観からすぐに判る。
・大金は置かれていなくても、翌日の釣り銭などがある。又、銀行が休業の時やゴールデンウィーク、年末年始などで売上金額が高額になっている時は大金があり特に狙われる。
・ATMが併設されている場合にはATM内の現金も狙われる。
・店舗は夜間無人となり、又商店街などは住民が少ないため少々の音を立てても良いため大型の破壊機器も使用できる。
・営業時間中に店内に客を装い下見ができる。カメラの設置場所、警備状況、金庫・レジの場所、高額商品の展示場所、従業員数、従業員の勤務体系など
・深夜まで営業している店舗は強盗が多い。従業員・客が少ない時間帯や終了後最終退出時の強盗が多い。
・盗んだ商品はリサイクルショップやインターネットオークションなどで販売できる。換金が容易でアシが付きにくい。
・アルバイトなどから警備状況やいつ現金が多いか、暗証番号、鍵の保管場所など情報が漏洩している。
・チェーン店舗の場合は店舗構造や運営形態、警備状況などが同じであり多店舗での成功経験を活かして横展開を行うことが容易である。
平成25年の店舗への侵入窃盗認知件数は、18,441件。
その内、48.6%が商店(深夜飲食店、スーパーマーケット、古物商、コンビニ、ドラッグストア、古物商、など)、51.4%がサービス営業(深夜飲食店、ゲームセンター、ホテル・旅館、風俗店、金融機関、スポーツ・行楽施設など)となっています。
店舗で多い業種
1位 その他の商店 6,966件(37.8%)
2位 その他の飲食店 6,588件(35,7%)
3位 深夜飲食店 1,174件(6.3%)
4位 給油所 417件(2.3%)
5位 一般ホテル・旅館 414件(2.2%)
6位 古物店 360件(1.9%)
7位 その他のスーパーマーケット 339件(1.8%)
8位 その他の風俗営業店 247件(1.3%)
9位 総合スーパー 234件(1.2%)
10位 コンビニエンスストア 178件(0.9%)
店舗への侵入口と手口
店舗においては「ガラス破り」がもっとも多く全体の37.8%で、内訳としては、「窓からのガラス破り」がもっとも多く、「表出入口のガラス破り」が続きます。
店舗においてはガラスに対する対策が不可欠です。
又、「無施錠」も22.8%あり、「施錠されていない表出入口」、「その他の出入口」、「窓」から侵入されています。
「表出入口の無施錠」が平成25年に698件もあったのにはちょっと驚きます。
どのような理由かは不明ですが、どんな時でも短時間でも施錠をするというのは防犯の基本です。
「錠破り」12.9%、「合かぎ」4.8%もあり、ガラスや扉を強化したとしても別の方法で侵入されることもありますので、侵入検知センサーなど防犯システムの設置が有効です。
特に狙われやすい店舗とその犯罪傾向、防犯対策
宝石・貴金属店、質屋、高級ブランドリサイクルショップ
宝石・貴金属店は外国人窃盗団による被害が多発しています。「爆窃団」と呼ばれる壁をジャッキーなどで穴を開けて侵入したり、車ごと店舗に突っ込み短時間で退散する荒っぽい手口での被害が多発しています。
- 大阪八尾市の宝石店に車で突っ込み、200点盗まれる
大阪府八尾市北本町のマンション一階にある宝石店に侵入した窃盗犯。
午前4時10分ごろ車がバックで突っ込み、シャッター、ガラス戸を破壊して、そこから侵入。
店内の陳列ケースも破壊し、中にあった指輪やネックレスなど約200点、400万円相当を窃盗。 - 2月に開店したばかりのリサイクルショップだったのに・・・高知
ブランド品400万円盗難 高知市のリサイクル店
午前3時35分ごろ、ハンマーのような道具で強化ガラス製の正面入り口の自動ドアを割って侵入。
感知機の一報を受けた警備会社員らが約9分後に駆けつけたが、店内の商品陳列ケースや棚が壊されてわずか数分で陳列ケースなどにあった高級ブランド商品など計約20点(販売価格約400万円)が盗まれる。犯人は通路の商品を押し倒しながら正確に高級品コーナーに直行。ショーケースをたたき壊し、手際よく商品を盗み出している。 - 貴金属店のシャッターに車ごと突っ込み2億円荒稼ぎの窃盗団
貴金属店のシャッターに車ごと突っ込み、バールでガラスを割るなど「ガッチャン」と呼ばれる大胆な手口で盗みを繰り返した窃盗団11人が逮捕。神戸市内を中心に西日本の二府五県で出店荒らしや車上狙いを重ねており、同課などは約650件、2億5000万円近い被害を確認。 - 爆窃団が窃盗? 1億4000万円被害 福岡市の貴金属店
福岡市中央区の貴金属店。店舗裏の外壁の一部が破壊され、穴が開いていた。店内が何者かに荒らされ、宝石類などが盗まれ被害総額は約230点、約1億4000万円。 - 名古屋市中区栄の百貨店の特設会場で、外国製高級腕時計(総額4900万円相当)窃盗
特設会場ではクリスマス企画としてロレックスの腕時計約160点をガラス製のショーケースに入れ、4人の従業員が売り場を担当していたが、午後零時45分ごろから同1時半ごろの間、2人が精算や包装などで売り場を離れ、残る2人が接客中に盗まれた。 - 壁破り宝石盗続発。路地裏が狙われています。爆窃団か?
午前1時45分ごろ、千代田区有楽町の雑居ビル1階の貴金属・時計店。同店と隣接するビルの約50センチのすき間に差し込んだ油圧ジャッキを伸ばし、同 店の換気口周辺の外壁などを破壊。約50センチ四方の穴を作り、店内に侵入したと推測される。同様の手口で複数店舗被害。中小の宝石店が集まる有楽町は、〈1〉路地裏が多く、人目に付きにくい〈2〉ビル間のすき間が狭く、ジャッキを使った「壁破り」を行いやすい――ことなどから、犯行グループに狙われたと分析している。 - 宇都宮の宝石貴金属店では女性従業員が強盗に縛られ放火殺害される被害も発生。昼間の万引きや強盗の被害もあります。
【宝石貴金属店、質屋、高級ブランドリサイクルショップの防犯対策】
- 宝石貴金属店では既に警備システムが導入されているケースも多いですが、短時間で荒っぽい手口に対応するため、【侵入した泥棒の視界を遮り、犯行を継続させない】霧による威嚇「フォグガード」を追加することをお勧めします。侵入を検知すると霧が噴射され、数秒で店内は真っ白。視界を奪うことにより犯行継続を妨げます。宝石店にて多く採用され、実際に窃盗発行時に犯行が中断され被害が最小に押さえられた事例があります。
- 宝石や高級時計などは、夜間は防犯金庫などに保管することをお勧めします。「防犯シャッター式ショーケース」はスイッチを押すとシャッターが覆ってガードするタイプで、ケース内に展示したまま商品を保護します。
- 万引き対策のために防犯カメラの設置。
- 強盗対策のために腕時計型の無線送信機による非常通報システム
ファーストフード、ファミリーレストラン
- アルバイトで深夜まで営業している店が多いため、営業終了し清掃後従業員が最終退出するのを待ち伏せされての強盗。
- 営業時間終了後無人時の金庫破り。
- 駐車場に留めたお客様の乗用車の車上荒らし(入店すると一定時間戻ってこないため狙われやすい)。
- 店舗裏の換気扇を外しての侵入。
- やめた元アルバイトによる侵入や、従業員の手荷物の盗難。
- 店舗内に侵入後現金がなかった場合には、レジスター、食器、いすなどの備品を破壊したり、異物を混入したりする被害も発生。
- チェーン店舗など同じような造りのため、狙われやすい。
ファーストフード、ファミリーレストランの防犯対策
- 従業員退出口の入退出システムや防犯カメラの設置
- 店舗内への侵入警戒威嚇システムの設置
- 強盗対策用非常用押しボタン
- 従業員の貴重品管理用セキュリティボックス
スーパーマーケット、ディスカウントショップなど大型店舗
- 事務所に置かれている金庫ごと持ち出される「金庫盗難」が全国で多発しています。何十キロもある大きな金庫でも数人で店外に5分以内に持ち出されています。ストップウオッチを持っての窃盗団の犯行も多いです。特に休み明けの深夜が注意。
- ATMが盗んだ建築重機を使用してATMごと盗まれるという被害が多発。
- スーパーマーケット内の宝石・貴金属店やブランドショップが窃盗団に狙われています。
- 万引きによる被害が多発しています。又、万引きによる客とのトラブルも発生。
- 布団や洋服などの売り場やトイレなどでは放火被害。
- 食料品売り場や布団などには針など異物混入の被害。
- 駐車場では車上荒らしや車へのいたずら、幼児などへのいたずら・誘拐などの被害。
スーパーマーケット、ディスカウントショップの防犯対策
- 金庫の置かれている事務所、宝石貴金属店には侵入検知センサーにプラスして音や光による威嚇撃退、霧による視界を遮るフォグガードを付加させることをお勧めします。
- ATMコーナーや店舗売り場内、駐車場には防犯カメラや防犯ミラーを設置し、死角をなくします。
- 放火されそうなトイレや布団売り場などには炎センサーで放火対策をします。
- レジでのトラブル時には非常通報ボタン。警備室などに通報します。
- 針の異物混入にはハンディタイプの金属探知器。
ドラッグストア
ドラッグストアを狙った窃盗団が発生しています。
- 複数の窃盗団が暗躍。国道沿いの店を標的。
- 医療品・化粧品・栄養補助食品・発毛促進剤など小さくて値段が高い(1個数千円~1万数千円)商品が狙われる。
- 店員の隙を狙って商品をバックに入れ、その日のうちに宅配便で医療機関に商品を卸している問屋に買い取りを依頼し現金化している。
- 通用口で待ち伏せし強盗
閉店の戸締まりをして裏口から外に出た男性店員を男が襲い現金800万円の入った重さ200キロの金庫を奪って逃走など。 - 万引き
- 強盗
本屋、セル・レンタルビデオ店
本屋、セル・レンタルビデオ店にとっては最も多いのが万引きによる被害です。又深夜まで営業している店舗には強盗被害も発生します。
対策としては防犯カメラや防犯ミラーにより死角をなくす、話題商品や万引きの対象になりやすい商品はレジ近くに置く、万引防止器を設置するということが必要です。
特に学生の多い場所では遊び半分に万引対策のされていない店(万引防止器のゲートが設置されていないことを確認)で万引きをするという被害が多発しているため注意が必要です。
ペットショップ・動物病院
外国で高額で売買されるためペットが盗まれる被害が多発しています。お客様から預かっているペットが盗まれると責任問題にまでなってしまいます。又、火災対策も絶対に必要です。
店舗兼住宅
住居と店舗が一緒の場所にある場合、「夜も昼も必ず家には人がいるから泥棒に入られない」「泥棒に入られても物音ですぐに気が付く」と安心している方も多いと思いますが、大阪で店舗兼住宅などで盗みを繰り返していた男が逮捕されました。
「店舗兼住宅はレジなどに多額のお金があり、セキュリティーも厳しくなく格好の獲物だった」と男は供述しています。2年間で京都、大阪、兵庫など2府5県で約250件の犯行に及んだと見られます。
店舗兼住居は「人がいるので安心」なのではなく、「人がいるから対策が必要」なのです。人=家族がいつ窃盗犯と出くわすとも限らない状況であることを忘れてはなりません。むしろ「防犯意識が低い」ということでターゲットにされる可能性があることを忘れてはなりません。
対策としては昼間は無人となる自宅を部分的に警戒するなど部分警戒解除、在宅警戒ができる侵入警戒威嚇撃退システムをお勧めします。建物内に入られる前に音により威嚇撃退するとともに異常が発生したことを家族に知らせます。
レンタカー店舗、中古車センターなど
レンタカーの店舗で発生した被害では利用客の個人情報を管理するファイルが盗まれたり、ノートパソコンが盗まれたとのことで、ノートパソコンには利用者の名前、住所、電話番号、免許証番号などが保存されていました。
また、ファイルを保管していたロッカーは鍵が掛かっていたが、バールのようなものでこじ開けられていたとのことです。コンピュータは中古市場で販売することができますし、個人情報に関しても売買されており、個人情報を狙ってのノートパソコン盗難は全国で続発しています。
また、屋外展示車に対するいたずら、備品盗難など。
商店街
アーケードを伝って2階の窓から昼間に侵入する被害が多発しています。アーケード街の店舗シャッターへのいたずら書き、備品の破壊、放火などの被害があります。
その他店舗の犯罪事情
大阪府警や富山県警など計七府県警の合同捜査本部は六日までに、近畿や関東、東北地方など広域で出店荒らしや自動車盗を繰り返したとして、計43人の窃盗グループを摘発。03年3月~05年5月の計440件(被害総額約三億五千万円)を立件したとのことです。
元暴力団組員の男が首謀。覚せい剤常習者らのつながりでグループを構成。4~8人が1組になって実行し、数人単位で盗難車を使って移動し犯行を続けています。
- 幹線道路沿いの「防犯設備がない」タバコ店などを狙う。
- 数人単位で盗難車を使って移動。
- シャッターをバールでこじ開けるなどして侵入していた。
- 空き巣に入った民家に共犯を待機させた上で銀行を訪問。盗んだ通帳で現金を引き出す際には、銀行側が本人確認のため名義人の住所に電話連絡する仕組みを逆手に取り、電話をかけてきた行員に受取人を名義人の家族と信じ込ませ、現金の引き出しに成功していたケースもあった。
- 盗みで得た利益の3~4割を幹部に「上納」させていた。
店舗全般の防犯対策
- 店舗ごとに防犯管理者を選定し、「防犯マニュアル」を作成、防犯訓練を実施します。
どんな犯罪が発生する可能性があるのかをあらかじめ想定し、万が一発生した時の対応に関して店舗内に徹底します。又、アルバイトなどが多い場合にはやめたアルバイトが合鍵の場所などを知っているといったことがないようセキュリティ対策内容に関して変更します。 - 侵入検知威嚇撃退システムを設置する。
店舗には必ず侵入検知センサーを設置し、侵入者が侵入しようとした瞬間に「威嚇用警報ベル」「サイレン」を鳴らして威嚇するということが最も大切です。泥棒は人目につくのを避けますので「音、光」で周囲に自分の侵入を知られることを大変嫌がります。 - 「フォグガード」などで霧により犯行を継続させない。
宝飾店などを狙う窃盗団の手口は年々荒く、車ごと建物に突っ込んでの侵入し、数分で犯行を終了という手口が増えています。そこで、侵入を侵入検知センサーが検知すると霧により視界を奪い、犯行を継続させないということが現在のところ最も被害を最小に押さえる効果があると言えます。 - 店舗建物外観から「防犯対策をしている」ことを示し、対象から外させる。
泥棒に対しては何重にも対策を立てることが重要です。そして対策が十分であることを「見せる防犯」として建物外観で気づかせること。「セキュリティ・キーパー」はぜひ設置していただきたいものの一つです。 - 防犯カメラを設置し死角をなくすとともに自動録画する。
万引きや異物混入、放火、いたずら、車上荒らし対策として、売り場の状況を集中的に把握するとともに死角をなくし、犯罪の発生しにくい環境を作ります。映像は自動録画し、問題発生時には確認することができます。 - 強盗対策に非常押しボタン自動通報システム
腕時計型の無線タイプのものを使用したり、マネークリップとしてお札のクリップに発信機能のあるもの、マットを踏んだときに異常信号を送信するものなどを選び、異常発生を離れた場所の管理者等に知らせます。 - 金庫センサーで金庫盗難対策
何十キロであろうとも過信せず、必ず金庫はボルトで固定します。又、金庫そのものを盗まれるのを検知する金庫センサーを設置し、金庫を持ち去ろうとするとベルやサイレンで威嚇撃退します。金庫のある部屋は侵入検知センサーを設置し、音・光・霧による威嚇撃退をします。 - 格子を過信しない。
格子が付いていると安心される方が多いのですが、格子は外から外すことができます。
今後格子を取り付ける場合には、防犯配慮商品として開発された格子で、特殊なビスなどで取り付けらるタイプのものをお勧めします。
今付いている格子に対しては、ビス頭をつぶすなどして簡単に取り外せないようにすることが大切です。「侵入に時間がかかるようにする」ことにより、泥棒は途中で諦めてしまいます。