こんなおかしな泥棒がいる
vol.44 『泥棒稼業を悔やむ時』
定職を持たず、遊びにギャンブルに派手な浪費生活を叶えてくれるドロボー稼業は、一度その味を占めると止められない、と言います。 しかし、そんな泥棒もある時すごく後悔し、落ちこむこともあリます。
これは、その一部ですが「泥棒渡世今昔」(中山威男著)の中に、次のような内容が載っています。
"これまで私は、毎日植木の仕事に出かけると言っては家族をだましつづけ泥棒稼業を繰返し、続けていました。しかし、泥棒生活をしていることを最も悲しく思ったことがあります。それはある日、20才の息子が、「お父さん、毎日植木の仕事は大変だろう。明日は休みだから俺を仕事に連れていってくれ。スポーツをやっているから土掘りぐらいは手伝えるよ。」と言ったことです。
この時ほど、子供に申し訳ないことをしたと悔やんだことはありませんでした。暗闇の中で、燃え上がるライターの明かりを頼りに狙いを定めての金庫破り。わしづかみにした札束のあの感触、血の踊る悪魔の喜び・・・・・。
しかし、息子のあの言葉を聞いて、目が覚めました。もう、パトカーのサイレンや赤い回転灯におびえる心も疲れ果てました。"
一獲千金を夢見て、ひたすら次のドロボー手口を研究しつづけていたこの男も、さすがにわが子の純真な、父親を思う言葉には堪えたようです。