こんなおかしな泥棒がいる
vol.53 『刑事冥利につきます』
日々、泥棒を相手に格闘している刑事さんも、そのキリリとした顔付とはうらはらに、時にはひどく落ちこむこともあるそう。だけど盗まれたものを持ち主に返してあげた時に見るその人のうれしそうな笑顔には、やっぱり刑事をやってて良かったな、と思われるんですって。
だけど、刑事冥利はつきても、あやうく大恥をかくところだった刑事さんも中にはいらっしゃいます。
それは、京都と大分で時同じくして仏像三体が盗まれる事件がおこった時のこと。取調べには少々手間取りましたが、何とか無事に持ち主のお寺に返せることになり、刑事さんは、お坊さんがわざわざ受け取りにこられるのだからと気を効かせて、真新しいダンボールを用意して待っていました。
しかし帰り際、お坊さんは手提袋から「白い絹布」を取り出して丁寧に仏像を覆い、しっかりと胸に抱いたのです!
この刑事さん、慌てて出しかけていたダンボール箱を足をバタバタさせて机の下に押し込みましたが、お坊さん一行が帰られる間、顔つきと態度だけは「刑事」を演技しなければならず、大変だったとのことです。
刑事になりきるのにも陰の努力があってこそ。でも、こんな優しい刑事さんなら親しみやすく、温かみを感じますね