こんなおかしな泥棒がいる
vol.58 『泥棒のプライド』
「この世界(盗みの世界)は病的な用心深さと、それ以上の臆病さをもち合わせている奴だけが生き延びれる資格を持っている。」 ―これはある怪盗トビ足袋男Nのドロボー哲学―
それだけに周りからは何と言われようと"金"を取ることを信条とし、犯行には完璧なまでのシナリオで真剣勝負。それほどドロボーそして生き延びるためには確固たる信念とプライドが必要なのである。しかしそのプライドを無惨に打ち砕くのが刑事の捜査で、突き詰められだんまり戦術を決め込むが刑事との戦いに敗れて説得された時、ドロボーのプライドはみるみる崩れ落ちてしまう。
そんな用心深く臆病なドロボーの中にも、思いも寄らず自分で自分のプライドを傷付けてしまったドジなドロボーもいる。
牛肉などの食料品を盗んで裏山に逃げ込み、山中の農作小屋で約6年半もの間生活していた男が、時効5ヵ月前に山火事見学に現れたところ、窃盗の疑いで逮捕された。
この男46才。男盛りのこの約6年間をたった1人山中でその日暮らししていた。それがある日思いも寄らず山火事を見学していた時にあっさり逮捕されてしまった。あわれ、6年半のプライドが一瞬にして崩れ落ちてしまったのだった。
「もう、少しで時効だったのに、ああ〜ん!くやし〜い!!」