こんなおかしな泥棒がいる
vol.60 『洋画「自転車泥棒」』
古い洋画ですが、イタリアの巨匠デ・シーカ監督の作で、『自転車泥棒』という映画がありました。あらすじはこうです。
第2次世界大戦直後、日本と同じく敗戦をむかえたローマの街に、街頭の広告貼りの仕事がめぐってきた1人の男がいました。仕事に使う自転車も、残っていた家財を全て質屋に持ち込み、やっとの思いで手にします。
ところがある日、自転車を盗まれてしまいます。その足で警察署に駆け込みますが、その当時あまりに被害が多かったため真剣にうけてもらえません。
何日か後にやっと自分の自転車を探し当てますが、ドロボー仲間に妨害されて犯人を取り逃がしてしまいます。その日その日の乏しい食事もままならぬ、心身ともにくたびれ果てた彼は、コロッセオ(円形競技場)の外に立て掛けてあった多くの自転車の1台をとうとう盗んで逃げ出します。
1人の叫び声が群衆を誘い、大勢の自転車群が逃げ惑う1台の自転車を追い掛けます。まるで猛獣に追われるサバンナシーンであるかのように・・・。
そして彼は捕まえられ、最後には警察に突き出されます。
ラストは、ローマの夕闇の中、警察署での調べを終えて放免された彼が、肩を落として息子の手をひきながら消えていく、そんなシーンでその映画は終わっています。
現在でも自転車の盗難は最も多く、1日に平均900件以上発生しています。しかし、現在とこの映画の当時とでは、豊かさの点で違いがあります。 この映画はとても切ない思いに駆られる映画です。