施設別犯罪事情・防犯対策
マンションの防犯対策
マンションの防犯対策
マンションでのセキュリティを考えると、まず最初に対策方法として考えられることは「集合玄関システム」や「エントランス・エレベーター内監視カメラシステム」を考えられて対策を行う場合が多いと思います。
しかし、これだけでは対策が不十分です。
マンションもテナントビルも同じですが、不特定多数の方が入館します。
集合玄関から入館される方を監視するだけなら問題ないかもしれませんが、不審者又は侵入者は人目につきそうな場所からの侵入はしません。それは見つかりやすいからです。
そこで、侵入者は見つからない様に侵入するにはどのようにすればいいかと考えます。
マンションで見つかりにくい場所とは色々とありますが、例えば1階住居の玄関前通路やベランダ側や非常階段の出入口など、1階に面しているあらゆる場所からの侵入が可能です。
そのような場所からの侵入対策も合わせて考える必要があります。「まさか、こんなところからの侵入は考えていなかった!」と侵入されてから気が付き、後の祭りになってしまうことが多々あります。 そのような事にならないように対策を考える必要があります。
昔、東京都内のマンションで不審者が入館して、ピッキング被害が多発していたマンションの対策を住民の方にお話したことがありますが、現場は都内の中心部で集合玄関にもオートロック、エレベーターホールやエレベーター内には監視カメラを設置されていました。それでも被害が多発していました。
色々と現場確認を行って見ると、非常階段出入口扉はカギ付きにもかかわらず、常時開放状態。1階住居のベランダには垣根を越えれば自由に入れる状態でした。このようにマンションの周りをよく観察すると防犯上問題がある場所が多く見つかります。その問題点に対し対策を行ったところ、ピッキング被害がなくなりました。
このように、建物の状況、周囲の環境、共用部・入居者専用部など領域区分ごとに色々な対策方法を組み合わせて、侵入経路を遮断するとともに、総合的にセキュリティシステムを考えることが大切です。
マンションの防犯対策を考える時に、「防犯環境設計」という考え方が注目されています。
「防犯環境設計」とは、建物周辺も含め適切な防犯上好ましい環境を作ることで犯罪抑止力を高め、犯罪を未然に防ぐことにより住人の犯罪意識の高揚と不安の除去、快適生活を提案する考え方です。
ニューヨークで実践された「割れ窓理論」(「建物の窓など1枚の割れた窓ガラスを放置すると、割られる窓ガラスは増え、その建物全体が荒廃し、やがて街全体が荒れ、無秩序状態となって犯罪は多発し、街が崩壊してしまう」という理論。1つの無秩序を放置することで地域社会の秩序維持機能が弱まり、犯罪は増加するというもの)を応用し、犯罪が発生しにくい環境を作ることで犯罪を未然に防ごうという考え方です。
具体的には、マンションを防犯性能の高い建物にする、地域の防犯意識を高めることです。
そのためには、「対象物の強化」「接近の制御」「監視性の確保」「領域性の確保」を行うことが必要です。
対象物の強化(窓・出入口を強化し、侵入行為に時間をかけさせ、あきらめさせる) |
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防犯性能の高い建物部品(防犯ガラス、CP-C等官民合同会議にて認定された建物部品等)を使用し、物理的防御を行い侵入に5分以上時間がかかるようにして、犯行をあきらめさせます。 逮捕された泥棒への調査結果では、侵入をあきらめる時間として約70%の泥棒が5分以内であきらめると答えています。そのために官民合同会議などでは侵入行為に5分以上持ちこたえることができる建物部品を推奨しているのです。「入りやすく逃げやすい」というのが、泥棒の目をつけるポイントであれば、「入りにくい」建物にしようということで防犯力をアップさせます。
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接近の制御(泥棒が近づきにくくする) |
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不審者を敷地内に入れない、建物に近づけないことが大切です。そのためには、警戒線を設定するとともに、侵入経路を遮断します。 警戒線の設定・・門扉・塀などにより自由に出入りできる部分と入居者のみが出入りできる部分を区分し、出入制限されていない敷地への出入口部の数を減らす。
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監視性の確保(隣近所から見通しを良くし、監視しやすくする) |
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泥棒にとっては、「人目につかないか」ということは犯行を行う上での大きなポイントです。
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領域性の確保(入りづらさ:テリトリーを泥棒に感じさせる) |
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近隣との良好なコミュニティの形成を行い、部外者が侵入しにくい環境を作り上げることが大切です。防犯意識を持った人の輪により防犯環境を作ることが大切です。
マンションの防犯環境形成には管理組合、自治会が防犯リフォームの企画立案実施、防犯意識の啓蒙と活性化支援、警察・地方自治体との連携強化、コミュニティ内の情報共有促進などの役割を担うことが必要です。 |
その他犯罪に遭わないための注意点
- 防犯システムがついているからと過信せず、窓・扉の施錠はきちんと行う。
「オートロックシステムがついているマンションの方が無施錠の入居者が多いので入りやすい」
これが窃盗犯の供述です。オートロックや入退出管理システムがついていても防犯の基本は「施錠する」こと。防犯システムを過信せず、施錠忘れを防ぐことが大切です。ごみ捨てのほんの数分でも必ず施錠する。トイレ・浴室の窓も換気のため開けっ放しにしない。これは、上層の階に関しても同じことで、上層でも侵入されている事例の通り、防犯意識が低いと犯行ターゲットにされてしまいます。 - 夕方になると自動的に室内照明を付ける。
「留守かどうか」は空き巣狙いが目をつけるポイントです。
「一人暮らしのマンションは、夕方に照明がついているかいないかで留守がわかる」
こんな留守サインを泥棒にしないように、暗くなると自動的に室内照明がつくようにしましょう。(タイムススイッチで照明を付ける/EEスイッチで照明を付ける) - 外部から留守だということがわかるようにしない。
洗濯物を干しっぱなしにしたり、郵便受けに郵便がたまっていたり・・といった「留守サイン」もやめましょう。留守番電話の録音に「○日まで留守です」などと入れるのはやめましょう。 - エレベータへの乗車は注意して
- エレベータ内は密室となるため、乗る前には周囲を確認し、怪しい人と二人きりにはならないようにする。
- 複数で乗ったにもかかわらず途中で二人きりになりそうな時には途中で下車する。
- いつでも停止ボタンや緊急非常ボタンを押せるようにエレベータに乗った時には立ち位置を操作ボタンの前にし、背をエレベータの壁にする。相手に背中を見せない。ドアの正面に立たない。
- 犯人は物陰に潜んでいて、ドアが閉まる直前に乗り込んでくることもあるが、びっくりして後ずさりしない。
- 怖いと感じた時は、ボタンを全部押して停止した階で降りる。