今日巷で話題の犯罪について防犯のプロが語る
社会福祉施設・文化財建造物ともに火災対策が急務
全国で火災被害が相次いでいます。
●19日群馬県渋川市の高齢者施設「静養ホームたまゆら」で入所者ら10人が死亡した。職員は1名で、スプリンクラ−の設置もなく、火災保険も切れており、通路にある引き戸にはつっかい棒をかけて、(入居者が)外に出ないようにしていた、という劣悪な環境であった。禁煙にもかかわらず喫煙をしている入居者もおり長年暗黙の了解となっていた。「タバコの不始末」が原因と見られる。
●22日午前6時ごろ、神奈川県大磯町西小磯の旧吉田茂邸から出火。午後零時半すぎに鎮火したが、木造2階建て本邸約1000平方メートルを全焼した。けが人はなかった。県警大磯署は失火と放火の両面で調べている。旧吉田邸の敷地内には24時間態勢で警備員が常駐、22日午前5時半すぎ、敷地内の巡回点検を終えた警備員が警備室に戻ったところ、漏電警報が鳴った。約20メートル離れた本邸に駆け付けると、2階から煙が出ていた。2階部分が激しく燃えており、同署は2階が火元の可能性があるとみている。その際、2カ所ある入り口はどちらも施錠されていた。火災報知機や監視カメラ、侵入者を検知するセンサーはなかった
●神奈川県内では、15日に国の重要文化財「旧住友家俣野別邸」(横浜市戸塚区)が全焼している。
また、昭和初期の洋館「旧モーガン邸」(藤沢市)でも2007年5月と08年1月、本棟と別棟をそれぞれ全焼する火災があった。旧住友家の出火原因は分かっておらず、旧モーガン邸については県警が放火とみて捜査している。
旧吉田邸は県立公園として保存する計画が進められていながら、国の重要文化財(重文)に指定されていないため、特別な防火対策は講じる義務はなかった。邸内の防火設備は漏電警報器と消火器だけ。重文であれば消防法によって自動火災報知設備と消火器の設置が義務付けられ、放水銃や貯水槽などの設置も促されるが、西武鉄道は「重文ではないので一般の民家と同じ扱いでいいという認識。行政から防火設備の指導を受けたこともない」と説明する。
文化庁はあくまで「重文以外の建物を指導することはない」という立場。防火設備の金銭的負担のほか、建物の増改築が許可制になるなど制限が生まれるため、同庁によると所有者が重文指定を避けるケースもあるという。
重文指定を受けていない建造物は、いわば保護行政の"死角"。では、重文以外で歴史的な価値が認められる建造物をどう守るべきなのか。都市・建築の防災に詳しい東大大学院の関沢愛特任教授は「神社仏閣では内部に手を加えることは難しいが、近代的な建物の場合、スプリンクラーの設置が比較的容易にでき、金銭的負担も少なくて済む」と指摘。具体的には「歴史的建造物を美術館などに転用する活用保存による防火対策が有効。重文指定も含め文化財の保護行政にはもっと柔軟な発想が必要だ」と訴える。
一方で立命館大の土岐憲三教授は文化財建造物への放火が後を絶たないことから、「不審者感知のセンサーの設置など火災を未然に防ぐ対策が必要だ」と強調。県内でも「旧モーガン邸」「旧住友家俣野別邸」の焼失が相次いでいる。横浜市は「いずれも不審火の可能性がある」として改修工事中の「旧伊藤博文金沢別邸」(金沢区)に夜間、警備員を常駐させる対策を取っている。
火災を受け、総務省消防庁と国土交通省は23日、社会福祉施設を緊急点検するよう全国の消防本部などに要請した。火気管理や避難経路の確保などを重点的に調べ、違反があった場合には直ちに是正させる。
同庁はまた、神奈川県大磯町の旧吉田邸全焼火災などを受け、全国の文化財建造物を対象とした緊急点検も要請。防火対策の現状を把握するほか、防犯カメラの設置や敷地内への入場管理の徹底などを求める。
(3月23日時事通信、カナロコより一部引用)
火災は発生すると人命はもちろんのこと、歴史的な価値も、文化財も何もかも灰と化してしまいます。
そういう火災の原因としては、
● 放火
● 失火
● 漏電
などがあります。
「放火」「放火の疑い」という原因での火災発生がもっとも多く、この「放火対策」を十分に行うことこそ火災被害から身を守ることになります。
「放火」を防ぐためには、
● 不審者を敷地内に入れさせない。・・・赤外線センサーによる外周警備で不審者を音と光で威嚇撃退、人感ライトや防犯灯の追加、フェンスなどによる境界線の明確化。
● 不審者に「放火」させるものを提供しない。・・雑誌・新聞・ダンボール箱など燃えやすいものを屋外に放置しない。
● 犯行を早期発見する。・・・炎センサーで10メートル先の7cmの炎を検知し、音声威嚇。防犯カメラで炎の発生や不審者侵入を画像で確認・自動録画。異常発生を離れた場所にいる管理者のFOMA携帯電話に画像通報・動画で状況把握し、早期対応。
● 老人保健施設などでは119番自動通報装置などを設置し、押しボタンを押すと119番に自動通報する。徘徊防止は施錠やつっかい棒ではなく、電気錠を使用し、通常は徘徊者のみ施錠、職員・入居者は自由に出入り可能・火災発生時には自動的に開錠するシステムを導入する。
こうした物理的な防火対策に加えて、防火責任者を設置し、常に防火時の対応に関して関係者と協議する、消火器、火災感知器、スプリンクラーなど防火対策機器の定期点検、防火訓練などを実施するといったソフト面の防火対策も徹底して実施することが大切です。
被害が発生している建物の中には、何も防火対策もされず、防火訓練もしていないところや、施錠やつっかい棒で外に出れない状況のままのところも多かったのが印象に残ります。
火災の被害が大きくなるか、ボヤなど最小で押さえることができるかは、そこを管理する人間の防火対策やリスクに対する常日頃からの認識により大きく左右されます。
「法律に縛られていないからなにも対策をしない」という考えでは被害を防ぐことはできません。
どこも予算は厳しいでしょうが、失ってからでは遅すぎるのであるということを、高齢者施設「静養ホームたまゆら」や旧吉田邸の無残な焼け跡が教えてくれます。
この教訓を関係者は活かしていただきたいと願います。
文化財・老人保健施設・寺の放火対策
投稿者: スタッフ (2009年3月25日 09:35)