今日巷で話題の犯罪について防犯のプロが語る
まだ継続する仏像盗難。仏像盗難犯には2種類ある。
まだ仏像盗難が続いています。
●安楽寺(栗東)で仏像4体盗難。3月にも別の寺で。
5日午前7時50分ごろ、滋賀県栗東市荒張の安楽寺に参拝に訪れた男性(79)が、寺の中の仏像がないのに気づき草津署に通報した。仏像4体がなくなっており、同署は窃盗事件として捜査している。
同署や同寺によると、なくなったのは地蔵菩薩(じぞうぼさつ)像(高さ約60センチ)と毘沙門天像(同45センチ)、不動明王像(同)、阿弥陀如来(あみだにょらい)像(同25センチ)。いずれも木造で江戸時代作とみられるが、文化財に指定されていない。 安楽寺の勝山圓昭住職(59)によると4日朝は異常はなかった。寺はふだんは施錠されていなかった。
栗東市では3月中旬にも、安楽寺の南東約5キロの金勝(こんしょう)寺で馬頭観音菩薩像が盗まれており、同署が関連を調べている。住職は金勝寺住職も兼ねており「難しいだろうが、早く仏像が帰ってきてほしい」と話している。(4月6日京都新聞より引用)
●奈良県明福院、六柱神社で仏像3体盗まれる。
奈良県天理市福住町の明福院(みょうふくいん)と同県宇陀市榛原区の六柱(むつはしら)神社に安置されていた仏像3体がなくなっていたことが28日、県警や関係者への取材で分かった。いずれも文化財指定は受けておらず、普段は無人状態だった。
明福院では20日ごろ、木製の弘法大師像(室町時代、高さ45センチ)など仏像2体がなくなっていることに住民が気付き県警天理署に届け出た。2月24日に仏像2体が安置されているのを確認しており、堂内に足跡のようなものが残っていたという。
六柱神社でも住民が22日に観音堂の本尊、木製の十一面観音立像(江戸時代中ごろ、高さ1.81メートル)がなくなっていることに気付き、県警宇陀署に通報した。観音堂の入り口3カ所は施錠されていたが、1カ所に、こじ開けた跡があった。2月6日には住民が堂内にある仏像を確認していたという。
同神社では昨秋にも、十一面観音立像の横にあった阿弥陀(あみだ)如来立像など3体が盗まれている。(3月28日 毎日新聞より引用)
仏像盗難犯には2種類タイプがあります。一つは自分のコレクションにしたいという欲求から盗む者。先日逮捕された建仁寺の仏像盗難犯人の自宅には何体もの仏像が飾られていました。信仰心が嵩じてのコレクションとの見方もされています。
もう一つのタイプは換金目当てで盗む者です。こちらが増えてきたために、仏像盗難が多発していると言ってもいいと思います。「仏像を盗んで売る」そんな罰当たりな・・と思わない人間が増えており、仏像を換金し売買できるしくみができているのです。古美術商への売却、インターネットオークション・・売却するのもそれほど難しいハードルはありません。文化財に指定されていない品を狙うのも換金しやすいからなのです。
今回の栗東安楽寺と奈良の仏像盗難被害のどちらにも共通している点が何箇所かあります。
1)盗まれた仏像は文化財には指定されていない。
2)近くの寺で最近仏像盗難が発生したり過去にも盗難被害があったにも係わらず、防犯カメラや防犯システムは設置されていない。施錠のみまたは無施錠。
3)無人寺、もしくは何箇所か住職が兼ねている。
仏像盗難被害が増えていて、近所で被害に遭っていたり、過去に被害に遭っていても何も防犯対策をしていない。
その理由は?というと、一つには予算がないということだと思います。
特に無人寺や兼務されている場合などは防犯システムや防犯カメラを設置したくともその予算がない、というのが最も多い理由ではないかと考えます。
そしてもう一つの理由は、「信仰対象の寺や仏像を自由に参拝できるようにするのが努め」という意識があることではないかと思います。
しかし、開かれた寺であればあるほど、放火や仏像盗難、賽銭泥棒といった被害のリスクが高くなります。誰でも自由に敷地内に入れる、参拝できる、というのはそれだけのリスクを抱えているものなのです。
だからこそ、本当は防犯システムや防犯カメラを設置し、犯行しにくい環境を作り、犯罪を未然に防ぐことを併行して行う必要があるのだと思います。
予算がない、といいながら、焼失したり、仏像が盗まれたのでは寺そのものの存続ができなくなってしまいます。
そうならないためにもやはり「防犯環境」として犯罪を起こしにくい環境を作ることをお勧めします。
寺の防犯対策
● 敷地全体を見直し、守りたい物、かけがえのない物が何なのかをピックアップし、泥棒の目で見て侵入者がどういう経路で侵入し盗むかを考える。(防犯診断として防犯設備士、総合防犯設備士など防犯のプロに任せる)
● 樹木の状態を見て、死角になりそうな場所がどこかをよく見極める。
● いつでも参拝できる一方で、入ってはいけない場所や守りたい物への侵入経路を防ぐために、防犯カメラや赤外線センサー、人感センサーなどを設置する。音声メッセージによりソフトな警告を併用する。
● 侵入者がもっとも嫌がるのはその場での音と光による威嚇撃退。音声による警告でも侵入しようとする場合には、第二段として防犯ベルなどを侵入検知センサーと連動させ、威嚇撃退する。
● 防犯カメラを死角になりそうな場所や守りたい物の周囲に設置する。
● 無人寺などは、異常の情報をご住職など関係者の携帯電話や自宅に自動通報する。メールや音声、画像で通報することが可能。早期発見し初期対応することが重要。
こうした防犯設備はリースなどを使用すると月々数万円程度で導入できます。
寺の防犯対策
投稿者: スタッフ (2009年4月 6日 09:19)